ダメおやじ

久しぶりに三波伸介主演映画「ダメおやじ」を観ました。
初めてこの映画を見たのは中学生くらいの頃。
原作は壮絶で救いのない漫画でしたので
実写版「ダメおやじ」は果たして
どのように再現されているのだろーと
怖いもの見たさで眺めました。
その感想は意外と親しみのある作風だったなぁという
くらいのもの。
先日よく利用している
レンタル屋さんでダメおやじのDVDのパッケージを目にして
懐かしくなり、借りてみました。
そしてひまーなお客さんが誰もいない雨ふりで、のんびり観賞です。

物語はダメおやじと奥さんである「おにばば」との結婚式から始まります。
ふたりを祝福するスピーチに重ねてなれそめから
プロポーズまでを再現ドラマで描きます。
おにばばは倍賞美津子。元気でキレイな娘は
空気デブなダメおやじ三波伸介とやがて結婚します。
月とスッポンのようなカップルですが、
花嫁が惹かれて惚れたのは真面目で実直なところ。
馴れ初めは
深夜、三波伸介倍賞美津子の実家の八百屋のドアをたたき
何事か!と両親(浅香光代がお母さん!)が三波伸介に尋ねると
昼間に買い物をして五十円多くおつりをいただいたので
それを返しに来たというもの。
押し問答の末に無事返すことができ「これでぐっすり眠れます」と
にこやかに帰る伸介。
当然浅香光代は頭の上で指をくるくる回します。
しかし娘の賠償美津子は誠実過ぎる伸介の対応に
感じ入り。。。追いかけて伸介にきゅうりを
渡すのでした。こころが通う瞬間に、私はじんわりきてしまいました。
しかし実直で融通や機転の利かない、でくの坊みたいな伸介は
会社ではお詫び係という閑職です。
こんな不条理な仕事を押し付けられても
それを誠実にこなす伸介。
出世から遠く離れている伸介をみるにつけ
おにばば倍賞美津子は怒り心頭で、折檻が繰り広げられます。
だけど拷問に近い攻撃が済むと
「うちのとうちゃんは誠実で実直だから・・」という
飽きれながらのひとことがあり、気持ちが救われます。
おにばばのゆるぎない信頼感がある、「愛のある暴力」に
もっと素直になればいいのにと思い入れ、私はまたじんわりと。。
救いようのない原作とは違い、激しくも愛のある夫婦の在り方がキチンと
伝わるので、登場人物と設定だけを使った別のドラマと私は捉えました。
コミカルな中に愛のあるエピソードが練りこまれる脚本を書いたのは
はたして誰なんだろうと確認してみて納得です。
ジェームス三木
中学生時分に毎日見ていたNHK銀河テレビ小説
特に好きだったジェームス三木作品。
その頃のジェームス三木作品は、駄目な男と頑なな女のハッピーエンドな物語が多く、
毎度ほろりとしたものです。
「ダメおやじ」のラストシーンは感動的な列車内のやりとり。
後に銀河テレビ小説でのジェームス三木作品「煙が目にしみる」
(川谷拓三、根岸季衣主演)
大好きだった「煙が目にしみる」の感動の列車を舞台にしたラストシーンの
原点はここにあったのかーーー
私は二作品を重ねあわせて、怒涛の感動を味わいました。
愛がある物語「ダメおやじ」
お客さんがいないことをいいことに
思いっきり目の掃除をさせていただきました。

ps
円楽と伊藤四郎も出演しています。
当時(`74年)笑点の司会は三波伸介
毒がありながらやさしさがちらりの名司会と記憶します。
後の円楽、歌丸、すみませんが遠く及ばず、、、
歌丸小円遊のいさかいを、最高の頃合で引き離す三波伸介の名調子を
もう一度見たいものです。